大阪府谷町。大阪唯一の高台に空堀という街がある。大阪では数少ない空襲の戦火から免れた街。この街の空堀商店街にこんぶ土居はある。江戸時代から300年余り、大阪の食は昆布出汁に支えられてきた。こんぶ土居の四代目店主・土居 純一は、「昆布屋という職業がある地域は、大阪ぐらい」と語る。
昆布を食用にする文化は、世界に類を見ない日本独自の食文化であり、最近は海外からも、昆布への関心が高まっている。しかし、この世界に誇る大阪の昆布出汁文化が、日本では今、分岐点に立たされていると土居 純一は言う。
原料のほとんどが化学調味料で作られた粉末だし商品の存在が、昆布漁師や昆布屋を悩ませている。安くて便利ではあるが、実際の昆布出汁とは似て異なるモノが余りにも多く世の中に普及しており、昆布生産や昆布出汁の味を、日本人が継承出来なくなるのでは無いかと危惧する。土居 純一は、父の代からの啓蒙活動や妥協を許さない製品づくりを受け継ぎ、大阪の食文化継承に力を注ぐ。